主題:ベトナム2018年競争法 主題その1:2018年競争法を案内する政令(議定)35号に従った経済集中に関する新たな観点

イントロダクション

初めて競争に関して規制する法律が発行されたのは2004年(2005年7月1日から効力を有した)で、それは市場における企業の競争に対して統一的な法的手段を創立するものとして、重要で画期的なものとなりました。

 その施行から13年以上経過した後、経済及び法-社会環境の広範囲で全面的な変更に対応して、ベトナムは新しい競争法(法律番号23/2018/QH14。2018年6月13日に発行され、10章、118条からなります。2019年7月1日に施行効力を有しました。以下2018年競争法」と言います)を発行しました。2018年競争法は2004年競争法に取って代わるもので、その詳細は2020年4月30日に発行された政令(議定)35/2020/NĐ-CP(以下「政令(議定)35号」といいます)により案内されます。

   議定35は、以下の注意すべき規定について、2020年5月15日から効力を有しています。

1.吸収合併の検査に関する規定。

2.競争制限協定に関する規定。

3.経済集中及びかなりの程度の市場優位性の通知の対象範囲に関する規定

政令(議定)35号の注意すべき点

このリーガルアップデートで、私たちは政令(議定)35号の主要な規定を取り上げて解説します。

政令(議定)35号で注意べき規定

1.  事業者統制、支配の定義

 買収する側の事業者の、買収される側の事業者に対する所有比率、統制権について、政令(議定)35号は、「事業者(又は他の事業者の業種、分野)の統制、支配」に関し、各場合の一つに属する場合であると具体的に定義づけています[1]

a.   所有比率:買収する側の事業者が、買収される側の事業者の(i)定款資本の50%を超えて、又は(ii)議決権付株式の50%を超えて所有する。

b. 財産の所有又は使用権:買収する側の事業者が、買収される側の事業者の財産の50%を超えて所有又は使用する権利を有する。

c. 買収される側の事業者の管理に関連する権利:買収する側の事業者が、以下の各権利の一つを有する。

(i)   直接又は間接に、買収される側の事業者の一定の管理職人事に関連する(多くの又は全ての)決定を下す。

(ii)  買収される側の事業者の定款を修正、補充を決定する。

(iii)  買収される側の企業の経営活動における重要な法律問題を決定する。

旧法令の規定(2004年競争法及びそれを案内する政令(議定)116/2005/NĐ-CP)では、買収される側の事業者の財産所有権を通じた事業者統制、支配の方式に関する単純な規定があるだけでした[2]。しかし、政令(議定)35号では、より広範囲なものになっており、財産所有権の限界だけでなく、定款資本及び株式の所有比率、特に、買収される側の事業者の経営活動、事業運用にかなりの作用を与える、買収する側の事業者の実際の権利の観点からも規定されています。

2.  かなりの市場優位性の確定

「かなりの市場優位性」に関する規定は、2018年競争法の新しい規定で、政令(議定)35号はその法定の指標を具体的に定めています[3]。注意が必要なのは、「かなりの市場優位性」は、事業者又は事業者グループが市場で指導的地位にある否かを確定するための基礎(の一つ)であることです。このことは国家の競争調節において重要な意味を有します。

2004年競争法では、市場優位性の評価において市場占有率の要素を中心とするだけでした。しかし、2018年競争法及び政令(議定)35号は外国法令、具体的にはアメリカ合衆国及び欧州連合のような各国の法令を参考にして[4]、それに従った調整をして、評価の指標を追加的に補充し、「市場優位性」という概念を法的なものに定義するためにそれら各指標の確定を案内します。これは、事業者の市場優位性の分析に全面的に役立ち、より正確なものとします。関連する国家管理機関も、事業者又は事業者グループが市場で指導的地位にあるか否かをより主体的に、柔軟に検討して評価をすることができます。

3.  経済集中通知の対象範囲

事業者又は事業者グループは、(経済集中となると予想される年の前の会計年度に基づいて)以下の4つの「枠」の一つに該当する場合は、経済集中の通知をしなければなりません。

指標 比率
金融機関 保険事業者 証券会社 その他の事業者
(ベトナム市場における総財産) 20%以上 15VNĐ以上 3VNĐ以上
総収入 20%以上 10VNĐ以上 3VNĐ以上 3VNĐ以上
取引価値 20%以上 3VNĐ以上 1VNĐ以上
(関連市場における)連結市場占有率 20%以上
注意:「取引価値」の指標は、ベトナム領土の外で行われる経済集中には適用されません。

このように、

政令(議定)35号は、旧法のように連結市場占有率の要素に集中するのではなく[5]、上記の様々な経済的要素による経済集中取引へのアプローチを調整しています。

経済集中に参加する予定の各事業者の連結市場占有率は、より厳格に検査されます(旧法は「30%以上」ですが、新法は「20%以上」)。

4.  経済集中の予備審査

経済集中の予備審査の結果は、各当事者の不備のない書類の受領日から30日以内に国家競争委員会によって発出されます。その結果は、(i)経済集中の実施許可[6]、又は(ii)経済集中は正式審査を受けなければならない[7]、となります。

予備審査の後に、国家競争委員会が正式審査の実施が必要であると決定した場合には、最終結果が発出される前に、予備審査結果発出の日から90日以内(複雑な事案の場合は60日を超えない期限の延長が認められますが、書面で各当事者に通知しなければなりません)に正式審査が実施されます。

5.  競争制限協定

政令(議定)35号は、競争制限協定のかなりの程度の競争制限作用又は競争制限作用を惹起する可能性の評価の詳細を規定します[8]。しかしながら、この政令(議定)で注意すべき新たな点の一つは、競争制限協定の安全な「枠」、言い方を変えれば、競争制限協定がかなりの程度の競争制限作用又は競争制限作用を惹起する可能性をないと看做される場合、を規定していることです。それに従えば、(i)5%より少ない連結市場占有率である水平的競争協定。又は(ii) 15%より少ない連結市場占有率である垂直的制限協定は、かなりの程度の競争制限作用を惹起しないと解されます。

結論

競争法が一般的に述べ、政令(議定)35号が個別的に案内しようとするもので最も大きな変化は、厳格な方法で経済集中取引を審査することです。具体的な各規定は、経済集中の通知範囲、支配に関する定義、事業者の審査、かなりの市場占有率を確定する規定に関する外国法令を受け入れる性質を有し、国家管理の観点からも、新法の調整範囲に属する関連取引を実施する企業の観点からも、明確で実施可能性のある競争についての規定の体系を作り出しています。


[1] 政令(議定)35号の第2条1項

[2] 政令(議定)116号の第34条。

[3] 2018年競争法第26条、政令(議定)35号第12条。

[4] 1992年のアメリカ合衆国司法省及び商業委員会の吸収合併に関するガイドライン、事業者の集中性の審査に関する欧州評議会の規定139/2004を参照してください。

[5] 2004年競争法第20条。

[6] 政令(議定)35号第14条2号になる経済集中を実施できる場合を参照してください。

[7] 競争法第37条、政令(議定)35条第14条4項。

[8] 政令(議定)35号第11条2項。